詩吟とは
詩吟とは
それでは詩吟を聞いてみてください。
読み方
月夜三叉口に舟を泛かぶ <高野 蘭亭>
げつやさんさこうにふねをうかぶ <たかの らんてい>
三叉中斷す大江の秋 さんさちゅうだんす たいこうのあき
明月新たに懸かる萬里の流れ めいげつあらたにかかる ばんりのながれ
碧天に向かって玉笛を吹かんと欲すれば へきてんにむかって ぎょくてきをふかんとほっすれば
浮雲一片扁舟に落つ ふうんいっぺん へんしゅうにおつ
字解
三 叉 隅田川下流の今の清洲橋附近の俗称 中洲があり今戸川が落ち合い 水流が三つに分かれていたという観月の名所
扁 舟 小舟 扁はひらたい
意解
隅田川の河口に近く、今戸川が落ち込むこのあたりは中洲が川を分かち、 秋の気配が濃く、明月が中天にかかって、
字解その影をうつし大江の水は萬里に遠く流れていく。
興に乗じて澄み切った青空に向かって笛を吹こうとすると、
一ひらの雲が私が乗る小舟を 迎えるかのようにただよってきた。
備考
この詩の構造は平起こりの七言絶句の形であって、下平声十一尤(ゆう)韻の 秋、流、舟の字が使われている。
作者略伝
高野 蘭亭 1704-1757
江戸時代中期の儒者。名は惟馨(いけい)、字は子式(ししき)、蘭亭または東里と号す。
江戸の人。荻生徂徠(おぎゅうそらい)の門に入り、学識、抜群であったが17歳のとき失明、徂徠の助言に従って 漢詩を志した。
晩年鎌倉円覚寺のそばに庵を作り死所としたが、宝暦7年江戸において没す。年54.詩作万首に及ぶ。
読み方
白帝城 <李 白> はくていじょう <り はく>
朝に辭す白帝彩雲の間 あしたにじす はくてい さいうんのあいだ
千里の江陵一日に還る せんりの こうりょう いちじつにかえる
兩岸の猿聲啼いて住まず りょうがんの えんせいないてやまず
輕舟已に過ぐ萬重の山 けいしゅう すでにすぐ ばんちょうのやま
字解
白帝城 四川省奉節県にあった古城
彩 雲 朝日に美しくいろどられた雲 朝焼け雲
江 陵 現在の湖北省江陵県 荊州ともいう
意解
朝焼け雲の美しくたなびく白帝城に別れを告げ、千里かなたの江陵まで、たった一日でかえってきた。その舟の速さはすばらしいもので、両岸で鳴く猿の声がまだ鳴きやまないうちに、私の乗る舟脚の軽い舟は、すでに幾重にも重なる山の間を通り過ぎてしまった。
備考
この詩の構造は平起こり七言絶句の形であって、上平声十五刪[さん]韻の間、還、山の字が使われている。
なおこの詩の題は「早發白帝城」であるが、白帝城と簡略にした。
作者略伝
李 白 701-762
盛唐の詩人、杜甫と並び称される。蜀[しょく]の錦州[きんしゅう]彰明県[しょうめいけん] 青蓮郷[せいれんきょう]の人で青蓮居士[せいれんこじ]と号した。幼にして俊才 剣術を習い任侠の徒と交わる。 長じて中国各地を遍歴し、42歳より44歳まで玄宗〔げんそう]皇帝の側近にあり、後再び各地を転々とし多くの詩をのこす。 安禄山[あんろくざん]の乱に遭遇して罪を得たが、のち赦される。62歳、病のために没す。